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キャッシュフローとは

キャッシュフローとは
<収録企業における特性>
令和4年版収録の全企業データでは黒字企業割合が53.7%となっています。特に、
(1)TKCのパソコン会計ソフト「FXシリーズ」で業績管理を行っている
(2)TKCの経営計画ソフト「継続MAS」で経営計画を策定している
(3)「税理士法第33条の2による書面添付」を実践している
――これら3つの条件に合致している企業の黒字企業割合は57.5%となっています。
【BAST収録企業の黒字企業割合】

ソフトバンクグループ、赤字1.7兆円・借金20兆円超えでも意外に「財務は健全」の秘密

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ここで気をつけるべき点は、ソフトバンクGは投資会社であって通信会社ではないということです。ソフトバンクGは、通信会社のソフトバンク株式会社(以下、ソフトバンクKK)や、ヤフー、LINE、ZOZOなどを傘下に持つZホールディングス、“中国版アマゾン”とも言われるアリババ、SVFが投資するスタートアップ企業(上述したCoupangやDiDiもここに含まれます)など、数々の企業に投資している「投資会社」なのです。

これだけ投資をしているだけあって、負債も多く活用しています。有利子負債の額は20兆円を超えており、この金額は日本の上場企業で2番目です(※2)。これほどに有利子負債も多く、さらに1.7兆円もの損失を計上したとなれば、資金繰りは大丈夫かと心配になるのも道理でしょう。

NAV:投資先の価値は正当に評価されているか?

NAVとLTVという言葉にはあまり馴染みがない方も多いと思いますが、実はソフトバンクGはこの2つを「最重要指標」と位置づけています。2021年6月にこの連載でソフトバンクGを取り上げた際にも解説しましたが、改めて簡単に確認しておきましょう。

NAVとはNet Asset Valueの略で、「純資産価値」と訳されます。NAVの計算式は次のとおりです。

NAV

NAVという指標は一般的な事業会社で使われることはまずありませんが、定義からもお分かりのように金融商品の時価を反映した指標ですから、投資信託やREIT(不動産投資信託)など一部の金融商品ではよく使われます。ソフトバンクGがNAVを最重要指標と考えている理由は、先ほどもお話ししたとおり、ソフトバンクGが事業会社ではなく投資会社だからです

図表4

ご覧のとおり、ソフトバンクGのNAVが減った大きな要因の一つは、アリババの時価総額が減ったためです。1年前はNAVの43%を占めていたアリババですが、その時価総額が下がったことで2022年3月末時点での割合は22%とほぼ半減し、代わってSVFの投資持ち分(NAVの49%)が相対的に増えた格好です。

図表5

さて、このNAVを発行済み株式数で割ったものが「1株当たりNAV」です。1株当たりNAVは、理屈上では株価と近い値になります。なぜなら、NAVは概念的には時価総額(=株価×発行済み株式数)と非常に近しいものだからです。

4月1日時点でのソフトバンクGの1株当たりNAVは1万1204円でした。では同日の株価はどうだったかというと……5559円。NAVより50%近くもディスカウントされている状態です

ソフトバンクGの立場からすると、NAVに対して株価が半分しかないということは、自社の投資先の価値が適切に株価に反映されていないということに他なりません。

LTV:負債過多ではないのか?

LTVというとSaaS企業などでよく使われる「Life Time Value:顧客生涯価値」が頭に浮かぶ方もいるかもしれませんが、ソフトバンクGにおけるLTVとはそうではなく、「Loan to Value」、つまり保有している株式の総額に対して純負債がどのくらいの割合かを示す指標です。

LTV

LTV = 4000万円 ÷ 5000万円 = 80%

LTV = 3000万円 ÷ 6000万円 = 50%

ここで、ソフトバンクGのLTVに戻りましょう。2022年3月時点のソフトバンクGのLTVは20.4%でした(図表6)。

図表6

NAV18.5兆円 + 純負債4.72兆円 = 保有株式23.18兆円

純負債4.72兆円 ÷ 保有株式23.18兆円 = 20.4%

ソフトバンクGは有利子負債が多いため、「そんなに借金(有利子負債)まみれで経営は大丈夫なのか」と心配する声をよく耳にしますが、実はLTVはわずか20.4%にすぎません。住宅ローンを例にすると「5000万円の家を保有していて、借金は1000万円程度」といったところです。借金まみれどころか、もっと借入をしてもいいくらいかもしれません。

ソフトバンクGの純負債が少ない理由

ソフトバンクGの有利子負債は20兆円超えと日本の上場企業中2位の大きさだというのに、純負債が4.72兆円というのは少なすぎるのでは?」と。

図表7

この買収の際に用いたのが「Whole Business Securitization」と呼ばれるスキームで、要するにボーダフォンの買収に必要な借入の返済原資は、ボーダフォンが生み出すキャッシュフローに限定され、親会社のソフトバンク(当時)には遡及されない、というものです。このような仕組みをノンリコースローンと言います。

これが、有利子負債額20兆円を超えるソフトバンクGの純負債が調整後に4.72兆円にまで下がる秘密であり、またLTVが20%程度でとどまっている理由です。

資金繰りは大丈夫か?

この連載でこれまでに何度も見てきたように、企業はたとえ赤字を出しても、キャッシュさえ確保できていれば倒産することはありません。では、ソフトバンクGのキャッシュの状況はどうでしょうか。

図表8

(出所)ソフトバンクグループ株式会社 2022年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)より筆者作成。

「1.7兆円の赤字」という言葉の印象とは裏腹に、2022年3月期におけるキャッシュ残高は約5.2兆円と、驚いたことに2021年3月期より5000億円ほど増えています。その理由は、営業キャッシュフロー(営業CF)で2.7兆円も稼いでいるからです。投資損益で3.4兆円もの損失を被りながら、実は営業CFは生み出しているのです

また投資CFに関しては、SVFが新たに投資先の株式を取得したことによる支出が4兆775億円もあったことで、キャッシュアウトが大きく増えました。それもそのはず、SVFの投資先件数は2021年3月期の224社から、2022年3月期には475社と過去1年で倍以上に増えています。1年に250営業日あるとして、1営業日ごとに投資先が1社増えるという、恐るべきハイペースです

先ほど見てきたように、ソフトバンクGの会計上の損失の多くは、SVFの投資先の時価の変動によるものでした。一方キャッシュについては、投資先の有価証券の売却、投資による資金拠出、有利子負債の調達、SVFの外部投資家に対する分配などで、会計上の利益とはまったく異なる動きします

  • ソフトバンクGの最重要指標であるNAVとLTVを押さえたうえで、
  • SVFの時価の変動が利益にどう反映されたのか、
  • 投資先の回収や追加投資などがどのように行われたのかを確認する

今後SVF以上に注目すべき事業とは?

図表9

おそらくソフトバンクGとしては、安定的な収益を生む通信事業で底堅くキャッシュを確保することで今の悪い環境を耐えつつ、成長産業への投資を加速させることで成長していく狙いなのではないでしょうか。

そこでソフトバンクGは、2022年度中にArmの上場を目指す方向へと舵を切り替えました。Armの株主はソフトバンクG(※4)とSVFがそれぞれ75%、25%となっていますから、Armが上場すればソフトバンクG全体で上場益を享受できることになります

※1 オーバーハングとは、大株主がこの先株式を大量に売却する懸念から買い控えが起き、株価が上がりづらくなることを言います。

※2 意外に思われるかもしれませんが、日本の上場企業で有利子負債額が最も大きいのはトヨタです。トヨタはグループで自動車ローンを中心とした金融事業を抱えているため、有利子負債が多くなっているのです。ただし、有利子負債と両建てで現金や金融債権を抱えているため、実際には有利子負債が多いことで必ずしも財務体質が悪いというわけではありません。具体的には2021年3月期において、トヨタは長期の有利子負債として13.4兆円を抱えていますが、非流動資産における金融事業にかかる12.キャッシュフローとは 4兆円を有しています。また、流動負債における有利子負債は12.2兆円ですが、流動資産として現金等5.1兆円、金融事業にかかる債権約6.8兆円を抱えています。以下も参照。「借金が多い企業1位は【どこ】? 3位本田技研、2位ソフトバンクグループ」マイナビニュース、2021年9月28日。

※3 ノンリコースローンは日本ではあまりない仕組みですが、実はアメリカの住宅ローンではよく見られます。実は2008年のリーマンショックの端緒となったサブプライムローン問題は、このノンリコースローンの仕組みが悪い方に使われたために起きたものです。

※4 厳密にはソフトバンクGの100%子会社であるSoftBank Group Capital Limitedが株主です。

編集部より:初出時、LTVの式を「LTV=保有株式÷純負債」としていましたが、正しくは「LTV=純負債÷保有株式」でした。訂正いたします。 2022年5月30日 20:00

<黒字企業割合は53.7%(対前年比1.9ポイント増)>令和4年版「TKC経営指標(BAST)」を発行

TKC全国会(会長:坂本孝司/事務局:東京都新宿区)は、6月1日より令和4年版「TKC経営指標(BAST)」をWeb方式で提供開始しました。 令和4年版BASTは昨年1年間(2021年1~12月)にTKC財務システムを利用して決算を迎えた年商100億円以下の中小企業の経営成績と財政状態を分析したもので、24万8,962社(全法人数の9%超)、1,178業種を収録しています。 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響は令和3年も継続し、中小企業経営に与えた影響が令和4年版「TKC経営指標(BAST)」に以下のとおりはっきりと現れています。

■令和4年版「TKC経営指標(BAST)」のポイント


1.【産業別黒字企業割合】黒字企業割合が1.9ポイントの上昇
2021年の全産業の黒字企業割合は、前年の51.8%から1.9ポイント上昇しました。
産業別に見ると、最も上昇したのは前年から4.1ポイント上昇して47.キャッシュフローとは 0%となった小売業でした。また、黒字企業割合が最も高かったのは建設業の58.1%だったものの、主要6産業の中で唯一前年から低下(1.4ポイント)しました。

2.売上高が減少
2021年の全産業の売上高(1企業当り平均額)は、コロナ禍の影響を受け大幅に減少した前年からさらに4,386千円減少し、221,544千円(対前年比98.キャッシュフローとは 1%)でした。
産業別に見ると、すべての産業で前年と比べて売上高が減少し、その中で対前年比が最も低かったのは、宿泊業,飲食サービス業の83.1%でした。
上記1のとおり、黒字企業割合が上昇している一方、売上高が減少していることから、補助金等を活用し、経常利益が黒字となった企業が多いことがわかります。

3.経常利益が増加
限界利益率が前年から0.5ポイント上昇(42.9%→43.4%)しましたが売上高の減少をカバーできず、結果、2021年の全産業の限界利益は、前年から803千円減少(対前年比99.2%)しました。また、営業外収益が増加した結果、固定費が前年から1,744千円減少(対前年比98.1%)し、全産業の経常利益は、前年から940千円増加の7,425千円(対前年比114.5%)でした。
産業別に見ると、建設業と宿泊業,飲食サービス業を除く産業で、前年と比べて経常利益が増加しており、補助金等を活用し売上高の減少を補っていることがわかります。

4.1人当り売上高・人件費がそろって減少
2021年の全産業の平均従事員数は、前年から0.2名増加(13.8名→14.0名)し、1人当り売上高(年)は前年から561千円減少の15,849千円、1人当り人件費(年)は52千円減少の3,821千円でした。全産業の労働分配率は、前年から0.6ポイント上昇の55.6%でした。

5. 長期借入金が昨年よりもさらに増加
2021年の全産業の簡易キャッシュ・フロー計算書を見ると、前年と比べて、税引前当期純利益が1,235千円増加し、営業活動によるキャッシュ・フローは833千円増加の10,207千円でした。設備投資は前年と比べて83千円増加したものの、営業活動によるキャッシュ・フローで賄えています。また、長期借入金の増減額が354千円増加した結果、財務活動によるキャッシュ・フローは995千円減少の6,152千円となり、結果として、現金預金の増減額は7,230千円の増加となりました。

■「優良企業」の定義変更
当指標では、同業種同規模の平均値を優良企業、黒字企業、欠損企業、黒字企業中位グループ、全企業の5つに分類し確認することが可能です。
そのうち「優良企業」の定義を令和4年版より、以下の5つの条件を全て満たす企業に変更しました。
1.書面添付の実践
2.中小会計要領への準拠
3.限界利益額の2期連続増加 キャッシュフローとは
4.自己資本比率が30%以上
5.税引き前当期純利益がプラス
今後、TKC全国会は優良企業の育成にむけて、より一層力を入れて取り組みます。

■金融機関における「TKC経営指標(BAST)」の活用
TKC全国会は、調査に協力したTKC会員、全国20のTKC地域会と「中堅・中小企業の持続的成長支援」の覚書を締結する金融機関、信用保証協会へBASTを提供しています。利用金融機関数は354機関(6月2日現在)で、約7,500のBAST利用IDを発行しています。金融機関数の内訳は、都市銀行3行(都銀における利用行割合60.0%)、地方銀行51行(82.2%)、第二地方銀行30行(81.0%)、信用金庫195庫(76.8%)、信用組合44組合(33.8%)、信用保証協会25協会(49.0%)、その他6機関となっています。
利用金融機関では、融資審査等での比較データとしての利用に加え、中小企業の経営改善を支援する際のベンチマークとして活用するなど、中小企業金融における“目利き力強化に役立っている”と評価が高まり、年々、利用機関数・ID数とも増加しています。
今後も地域金融機関と連携し、中小企業の健全な成長・発展を支援してまいります。

◆元金融庁長官・遠藤俊英氏の推薦のお言葉
元金融庁長官の遠藤俊英氏より、「TKC経営指標(BAST)」を推薦するお言葉を、次のように頂いています。
〈推薦のことば〉


◆「TKC経営指標(BAST)」要約版・速報版
BASTは原則としてTKC会員以外への提供等を行っておりません。
ただし、より多くの企業経営者等に自社の現状分析や経営方針決定等でご活用いただくため、要約版および速報版を公開しています。 キャッシュフローとは
◇閲覧方法
下記のTKCグループホームページ「経営者の皆様へ」サイトから閲覧できます。
URL:https://www.tkc.jp/tkcnf/bast/sample/


〈ご参考〉
<「TKC経営指標(BAST)」とは?>

TKC経営指標(BAST)は、TKC会員(税理士・公認会計士)が関与する中小企業の経営成績と財政状態を分析したものです。TKC会員が毎月継続して実施した巡回監査※と月次決算により作成された会計帳簿を基礎とし、そこから誘導された信頼性の高い決算書(貸借対照表および損益計算書)を収録データとしています。
これだけの精度と速報性を持つ中小企業の経営指標は、世界にも類例がなく、金融機関等から高く評価されています。令和4年版(2021年1~12月確定決算)の収録法人数は24万8,962社、分析対象は1,178業種に及びます。
BASTは個別企業の決算書を開示しているものではなく、2期比較が可能な、同業種同規模の3社以上の決算書を合算し、その平均値を優良企業、黒字企業、欠損企業、全企業、黒字企業中位Gの同類体系により表示しているものです。
※巡回監査:関与する中小企業を毎月および期末決算時に巡回し、会計資料ならびに会計記録の適法性、正確性および適時性を確保するため、会計事実の真実性、実在性、網羅性を確かめ、かつ指導すること。

【黒字企業割合と黒字申告割合の推移】

※1「BAST黒字企業割合」は、「TKC経営指標(BAST)」の「収録件数」及び「黒字件数」を基に計算しています。なお、「TKC経営指標(BAST)」の「黒字企業」とは、「期末純資産」及び「税引前当期損益」が、いずれもプラスである企業をいいます。
※2「国税庁公表黒字申告割合」については、2006(H18)年までは、国税庁「会社標本調査結果」における数値を採用し、2008(H20)年以後は、同庁「法人税の申告事績の概要」における数値を採用しています。

<収録企業における特性>
令和4年版収録の全企業データでは黒字企業割合が53.7%となっています。特に、
(1)TKCのパソコン会計ソフト「FXシリーズ」で業績管理を行っている
(2)TKCの経営計画ソフト「継続MAS」で経営計画を策定している
(3)「税理士法第33条の2による書面添付」を実践している
――これら3つの条件に合致している企業の黒字企業割合は57.5%となっています。
【BAST収録企業の黒字企業割合】

〈Fのみ利用企業〉
TKCのパソコン会計ソフト「FXシリーズ」で業績管理を行っている企業
〈KFのみ利用企業〉
FXシリーズ利用でTKCの経営計画ソフト「継続MAS」で経営計画をしている企業
〈KFS利用企業〉
FXシリーズと継続MAS利用で、「税理士法第33条の2による書面添付」を実践している企業

◆「TKC経営指標(BAST)」の著作権について
「TKC経営指標(BAST)」の著作権は株式会社TKCに帰属します。
「TKC経営指標(BAST)」の内容を論文等で引用又は参照する場合は、説明文として下記の文章を必ずご利用ください。

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